ランボー 最後の戦場

 見ました。スタローンのウルトラ残酷巨編。
 きっと最初のスクリプトでは、あまりに過酷なビルマミャンマー)の現状の前に、平和主義のキリスト教徒も金目当ての傭兵たちも、そして世を捨てたランボー自身も否応なしに変化せざるを得ない、という心理的な相克がもう少し描かれていたのを、スタローン監督が演出段階で「そんなもんいらん!」とズバッと切り捨て、正味80分の本編をただひたすら血と肉片飛び散る地獄絵図に費やしたんじゃないか…そんなことを考えながら見てました。
 普通、アクション映画の暴力って観客にカタルシスを与えてヒロイズムを肯定するか、または安易なヒロイズムを否定したりヴァーホーヴェン映画みたいにパロディ化するための要素だと思うんですけど、この映画の人体破壊描写はそういう段階を突き抜けてもう別の次元に行ってるような気がします(特に政府軍が三光作戦する場面での畳み掛けるような鬼畜描写の連発が素晴らしい。あとトラック1台分の兵士がミンチになるところとか)。かろうじて「ムダに生きるか、何かのために死ぬか」というランボーの決めセリフが燃えるんですが、じゃああれだけの犠牲を払った戦いの果てに何が残ったかというと「ああ、オレあの子に振られちゃったなあ…」という苦い徒労感。いままでのランボーの戦いぶり(とその後の世界情勢)を振り返って重ね合わせると、感慨深いものがあります。


(追記:何が足りないんだろうと考えてみたのですが、やっぱり戦闘シーンでゴールドスミスの「♪ジャジャジャーンジャーン」が流れなかったのが最大の要因かと)


 ちなみにシリーズでいちばん自分が好きなのは、やっぱり「怒りの脱出」。

 映画よりもデイヴィッド・マレルの原作(及びノヴェライズ)のほうが面白いんですけどね。特に「一人だけの軍隊」は暴力小説の大傑作。
一人だけの軍隊 ランボー (ハヤカワ文庫)

一人だけの軍隊 ランボー (ハヤカワ文庫)

ランボー―怒りの脱出 (ハヤカワ文庫 NV (385))

ランボー―怒りの脱出 (ハヤカワ文庫 NV (385))

ランボー3―怒りのアフガン (ハヤカワ文庫NV)

ランボー3―怒りのアフガン (ハヤカワ文庫NV)

 なお「怒りのアフガン」は、映画とはまったく別のストーリー(重傷を負ったトラウトマン大佐を連れてランボーと女医、少年の3人がひたすら逃げる話)になってます。