赤いハンカチ

赤いハンカチ [DVD]

赤いハンカチ [DVD]

 石原裕次郎の日活ムードアクション後期の代表作です。
 神奈川県警の刑事として麻薬組織を追っていた裕次郎と相棒の二谷英明。護送中に逃亡を図った重要証人(初代おいちゃんの森川信)をつい射殺してしまった裕次郎は、好意を抱いていた証人のひとり娘・浅丘ルリ子から責められ、自責の念から警察を去って北海道で土方仕事に就いていました。しかし四年後、この事件には裏があると睨んだ後任の警部補・金子信雄から、刑事から実業家に転進して成功を収めたかつての相棒が怪しいと聞かされ、さらに浅丘が彼の妻になっていると知って、自らの過去と決着をつけるために再び横浜に舞い戻ります。
 裕次郎・浅丘・二谷の三角関係に比重を置くあまり、桂小金治の死にあまり意味がないとか、芦田伸介率いる別の組織がぜんぜん物語に絡んでこないとかストーリー的に弱い部分が多くて、これはちょっとダメかなあ、と思っていたら、すべての始まりとなった警察署前で裕次郎二谷英明が対決するクライマックスではまるで舞台劇さながらの盛り上がりで、ああこれがやりたかったのか、とすごく納得。
 完全に“ギターを持った渡り鳥”状態の裕次郎、清貧の少女と良家の奥様のふたつの顔を演じ分ける浅丘ルリ子、老獪だけれど根は優しい金子信雄とみな忘れがたいのですが、金も名誉もすべてを手にしつつ、本当に愛した女の心だけは自分のものにできない悲劇の男を二谷英明が大熱演。悪役なのにあまりにもかわいそうで、最後はほとんど泣きそうになりながら見ていました。
 あと実直な好青年役で川地民夫が出ているのですが、さわやかな笑顔がぜんぜん似合ってなくて別な意味で泣けます。