チャイナタウン

チャイナタウン 製作25周年記念版 [DVD]

　WOWOWのアカデミー賞特集より（75年度の脚本賞）。
　1930年代のロサンゼルスを舞台に描かれる巨大な暗黒。ジャック・ニコルソン扮する私立探偵は否応なしにその中へ引き込まれ、真相を求めて奔走するが、待ち受けていたのはあまりに非情な結末だった。
　普通この手のハードボイルド・ミステリ映画は原作つきが相場ですが、本作の脚本はロバート・タウンの完全なオリジナル。LA創成史の暗部を容赦なく暴く展開とどこか歪んだキャラクターたちは、後のエルロイ先生の仕事ぶりを彷彿とさせます（黒人差別ネタはないものの、中国人とユダヤ人がその替わりに）。
　予定では都市の根幹を成す水道・ガス・道路をテーマにした全三部作の構想だったらしいですが、ニコルソン自らが監督したあまりに遅すぎる続編「黄昏のチャイナタウン」（90年）の大失敗により、結局実現しなかったのが残念です（見てないけど）。

黄昏のチャイナタウン [DVD]

　その脚本に輪をかけて観客をどん底に突き落とすのが、ロマン・ポランスキー監督の一見静かで端正なように見えてドロドロとした異常さが流れる演出。ロバート・タウンと衝突してまで脚本を変更させたラストシーンで一瞬写る血まみれの死体はイヤでもシャロン・テート惨殺事件を思い起こさせるし、監督自ら披露する狂気のチンピラ演技も暴力描写の強烈さとあいまって怖すぎるにもほどがある。映画史に残る厭らしいキャラクターを演じたジョン・ヒューストンの不快さも強烈でした。
　ところでヒロイン役のフェイ・ダナウェイはやはり凄まじい熱演を見せてくれるんですけど、いま見るとあんまり美人じゃないんですよねこのひと。たとえばカレン・ブラックとかもそうですが、70年代って正統派美女じゃない女優が大活躍してて、やっぱりあの頃はみんなどうかしてたんだなーとつくづく思います（褒め言葉）。
　で、劇中の彼女は瞳の虹彩に小さな傷があるって設定なんですが、これって実は[母親と近親相姦して自分の目を刺したオイディプス王]の故事になぞらえて事件の真相を暗示してるんですね。IMDb調べてて、そらオスカー取るわ…と感心しました。

　ポランスキー監督はこの映画を撮った3年後の1977年にジャック・ニコルソン宅にて当時13才の少女モデルをレイプした容疑で逮捕起訴されますが、有罪判決を受けて収監される前にヨーロッパへ逃亡。以後アメリカには戻っていません（本人は冤罪を主張）。この問題はいまでも決着しておらず、つい先日も訴追取り消しをめぐる審理への出廷命令を受けたとの報道がありました。
　http://www.varietyjapan.com/news/showbiz/2k1u7d00000j7o16.html
　事実関係はどうあれ、やっぱり未成年に性的行為をはたらくのは重大な犯罪ですから、くれぐれも映画監督のみなさんは作品の中だけでリビドーを発散させてくださいね！（あと一部のはてなダイヤラーも）

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　この人も国外逃亡すればよかったのに…。