ヴィクティム

ヴィクティム [DVD]

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 リンゴ・ラム監督、久々のお目見え…と思ったら9年前の作品がなぜか昨年になってリリース!
 武装集団に誘拐された平凡な男(ラウ・チンワン)が、かつて一家心中のあったホテルの廃墟で保護される。その日以来、すっかり人の変わってしまった男に戸惑う恋人(エイミー・クォック)、そして男に疑惑の目を向ける刑事(レオン・カーフェイ)。この三者の葛藤を描く前半は、いったい犯罪スリラーなのか心霊ホラーなのか、どちらに転ぶのかまったく見当がつかないのだが、「爆裂刑警」「重装警察」のジョー・リー(李耀明・既に故人らしい。ショック!)率いる誘拐団が出てくるあたりからどんどんアクション色が強くなっていって、最後には大掛かりな陰謀が明らかになるが…。

 地味ながら大胆な脚本は、多分S・キングの某作品(の映画化版)が元ネタになっていると思われるが、リンゴ・ラムはこの複雑な物語をベテランらしい腰の据わった演出で最後まで見せ切る。でも橋から飛び降りるスタントがVFXでごまかしてあったのは、かつてスタントマンに“殺人東”と恐れられた監督らしくないぞ。 
 実の夫人エイミー・クォックを相手に大熱演を見せるラウ・チンワンが素晴らしい(全裸あり)。レオン・カーフェイはちょっと「ダブル・ビジョン」と役柄が被っていたような(こっちの映画が先だけど)。その部下役でホイ・シウホンがまたまたいい味。ちなみに自分には女刑事役のエミリー・クワンが、ロイ・チョンに見えて仕方なかった…。
 ゲロ吐き・腕チョンパなどの80年代香港映画テイストもそこはかとなく漂い、なかなかの佳作。その年の金像奨10部門にノミネートされたのも納得。
 それにしてもこんな古い作品が出るんなら、同じリンゴ・ラムの「高度戒備」(97年)も出してくださいよ。