野良猫ロック ワイルド・ジャンボ

野良猫ロック・ワイルド・ジャンボ [DVD]

野良猫ロック・ワイルド・ジャンボ [DVD]

 前作の長谷部安春に替わって藤田敏八が監督を務めたシリーズ第2作は、“男と女の抗争劇”から一転して、無軌道な若者たちが大金強奪に挑む犯罪映画色の強い物語。
 相変わらず虚無的だけど今回はとぼけてる藤竜也(珍しく土下座までする)、怒るとなぜか九州弁になる梶芽衣子(ビキニ姿がキュート!)、オックス解散後、役者に転向した夏夕介(髪型のせいかオダギリジョーっぽく見える)、ガンマニアの前野霜一郎(本名・前野光保の方が有名か)、暴力は苦手だが、理論で彼らを冷静にまとめる地井武男(なぜか女性嫌い)の5人は、謎の美女・范文雀の誘いで宗教団体「正教学会」(!)の寄付金3000万円を奪おうと目論むが、そこは素人、あっさりと齟齬を来たして破滅が訪れる。
 この映画の魅力は犯罪行為そのものよりも、そこへ至るまでのダラダラした経過。掘り出した旧日本軍の武器を分解整備してみたり、海辺にテント張って合宿してみたり、海の家からゴムボートかっぱらってみたり、海水浴場で他愛のない悪戯を仕掛けてみたり、ほとんど子供の夏休み状態。例えがおかしいかもしれないが“旅行は計画を立てている時が一番楽しい”という表現がぴったり来る。
 しかし絶体絶命の瞬間になっても、彼らは投げ出したりはしない。最後まであがき、もがき苦しんでも突っ走るしかないのだとばかりに撃ちまくる。それは決してヒロイズムなんかではなく、原作のタイトルが示すとおり「破れても突っ込め」、それだけ。特に前野霜一郎はその後の事件があるだけに、余計に感慨深い。
 彼らの標的となる「正教学会」は明らかにアノ学会がモデルになっており、さすがに配慮したのか肝心の学会内部の人間はほとんど登場せず、敵となる存在が見えにくいのが本作の弱点。しかし、お巡りさん・内田良平でさえ学会の名前を出せばコロリと態度が変わるし、親切な女医さん・白木マリも信者だったりする。直接ストーリーには関係ないのだが、このあたりのジワジワとした包囲感が妙に不気味な余韻を残す。
 和田アキ子は特別出演扱いだが、冒頭で地井武男と絡むシーンは明らかに代役で、その他のシーンは1作目からのバンクフィルム。やっぱり本当にいろいろあったんだろうな(例えばパキさんの顔が怖かったとか)。
 恒例のゲスト出演はにしきのあきら(現・錦野 旦)と野村真樹(野村将希)! 劇中劇での出演なのだが、特ににしきのの棒読みっぷりが凄い。ワザとか?
 長谷部作品のようなスタイリッシュさを期待すると裏切られるが、自分のようなダラダラ人間にはシンパシーを感じる映画。梶芽衣子も普通に可愛いし。

 ところで第五福竜丸って、当時あんなふうに夢の島に放置されてたのね。知らなかった。