やがて復讐という名の雨

やがて復讐という名の雨 [DVD]

やがて復讐という名の雨 [DVD]

あるいは裏切りという名の犬」のオリヴィエ・マルシャル監督とダニエル・オートゥイユが再びタッグを組んだフランス製刑事ドラマ。前作と違って日本ではDVDスルーに終わったけど、個人的にはこちらのほうが断然好みの作品。
 同僚との不倫が原因で妻は植物人間、娘は事故死という結果を招き、以来酒に溺れる毎日を送る刑事シュナイデル。酔った上での不祥事の責任を取らされて夜間勤務に回されるが、それでも警官としての職務を果たすべく独自の捜査で連続レイプ殺人の犯人を追い続ける。
 25年前の惨殺事件で両親を失い、いまだに心の傷が癒えない女性ジュスティーヌ。事件の犯人が模範囚として仮釈放されるかもしれないという情報を耳にするが、今では疎遠になった妹にも同棲中の恋人にも内心の苦悩を打ち明けられず、ひとり不安な毎日を送っている。
 あるとき新聞に載ったシュナイデルの写真を見たジュスティーヌは、彼が25年前に犯人を逮捕した刑事だと気づく。一方のシュナイデルはついに連続殺人犯の手がかりを見つけ、独断で相棒とともに逮捕に向かうが…。

 前作同様に元刑事だったマルシャル監督自身の体験がベースになっているとのことだが、描かれる犯罪の内容が内容だけに「あるいは〜」のような派手な銃撃戦は一切なく、そのぶん過去に囚われたキャラクターたちの内面をじっくりと掘り下げる地味な展開。
 しかしどんなに周囲に蔑まれ叩きのめされても、地べたを這いずるようにしてなお自らの信念を貫くダニエル・オートゥイユのやさぐれ演技が素晴らしいし、「ケープ・フィアー」のデ・ニーロばりの全身タトゥーで老凶悪犯を演じたフィリップ・ナオン(「ハイテンション」の殺人鬼の人)の得体の知れない不気味さもとてもよかった。
 そして犯罪者以上に主人公を苦しめるのが警察という巨大組織の卑劣さ。このあたりの描き方はさすがに内情を知っているものの強みで、立場は違うが元犯罪者という視点からフランスの司法の問題点を告発していたジョゼ・ジョヴァンニの映画を思わせる。

(※以下ネタバレあり)
 映画秘宝のレビューでは「グラン・トリノ」と比較していたけれど、確かに後半の展開には通じるものがある。しかし最後に主人公が下す決断はまったくの正反対で、こちらのほうがよりストレートで破滅的だが、見るものにカタルシスを与えるのは確か。

 警察機構の問題点を告発したジョゼ・ジョヴァンニの刑事ドラマ。DVD化希望。