ダーティファイター
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2008/12/10
- メディア: DVD
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もともとこの企画はイーストウッド本人から出たものの、周囲からはずいぶんと反対されたとのこと。しかしフタを開けたら大ヒットを記録し、続編「ダーティファイター/燃えよ鉄拳」まで製作される結果に。実際のところ、一見すると作りはかなりゆるーいけど、カントリー&ウェスタン、ビール、トラック、バイク、そしてストリート・ファイトといかにも白人労働者層に受けそうな要素満載(市井の労働者たちへのシンパシーは「グラン・トリノ」へも引き継がれている)の、要するに東映プログラム・ピクチャーみたいな映画。そういえばカポネ団みたいな中年暴走族も出てくるしね!
さらに信じられないほどに芸達者なオランウータンのクライド君をコメディリリーフとして登場させることにより、女性層や子ども層にもアピールするというかなり周到な計算のうちに作られた作品。こうやってみると“大衆のスター”と“映画作家”という両方のイメージを守り続けるイーストウッドのセルフプロデュース能力には舌を巻くよりほかない(そこが苦手だというひともいるかもしれないが)。
ヒロインのカントリー歌手を演じるのは、当時イーストウッド映画のミューズだったソンドラ・ロック。色白で大きな瞳、薄い胸に小柄な体躯をピタピタのポリエステル・スーツに包み、実際に見事な歌声を披露するんだけど、でもどうしてもこの人が出てくると、後の破局劇のことが浮かんじゃうんだよねえ…。
あと脇役陣では、隣家に住む相棒ジェフリー・ルイスの母親役で「ハロルドとモード/少年は虹を渡る」のルース・ゴードンが登場。イーストウッドを杖でひっぱたいたりショットガンをぶっ放して暴走族を撃退したりと大暴れしてくれるのがうれしい。
結局ラストは恋もケンカも自分から身を引くほろ苦い幕切れだけど、この映画が観客に支持された最大の要因はそこにある気がする。だってほら、「センチメンタル・アドベンチャー」の中で「失恋はいつだっていい歌のテーマになる」って言ってたでしょ?で、それに続くセリフが「もっといいのは誰かが死ぬ歌だ」。それを考えるとこの「ダーティファイター」と「グラン・トリノ」はアメリカ人気質を描いているという意味で、実は表裏一体の関係にあるのかも知れない(たぶん考え過ぎだけど)。