センチメンタル・アドベンチャー

センチメンタル・アドベンチャー [DVD]

センチメンタル・アドベンチャー [DVD]

 クリント・イーストウッドが当時14才の息子カイルと共演した監督・主演作。自らの音楽趣味を全面に押し出したロード・ムービーで、肺を患って死期が近い主人公、少年との親子のような交流など、おそらく彼のフィルモグラフィの中ではもっとも「グラン・トリノ」に近い作品。ただし少年が身をもって学ぶのは家の修理や庭仕事ではなく、酒とセックスとマリファナだったりするが。
 30年代のオクラホマ。砂嵐(ダストボウル)に悩まされ西海岸への移住を考える農夫一家(この設定は「怒りの葡萄」と同じだ)の息子・ホイットは、流しの歌手で大酒飲みの叔父・レッドに付き添ってカントリーの聖地ナッシュビルへと向かう。途中さまざまなトラブルに遭遇しつつ、ようやくたどり着いた目的地でグランド・オール・オプリのオーディションに臨むレッドだったが、彼に残された時間はあまりにわずかだった…。
 イーストウッドは自ら歌にギターにピアノ演奏を披露し、本物のミュージシャンたちと競演する多才ぶりを披露。一見ユーモラスな物語の中に不意に暗い死の影が差す作劇も監督らしいスタイルで、途中で旅の仲間に入る歌手志望の少女がヘッタクソな「マイ・ボニー」を歌っているうちに、いつのまにか肺病の男の歌に変わってしまう場面の不吉さは出色。
 クライマックスで命を削るようにして最後のレコーディングを続けるレッドの姿にホイット少年が「何のために彼は歌うの?」と問うと、レコード会社の男が「To be somebody(名のある人間になるためだ)」と答えるシーンも泣かせる。

 で、劇中、カイル扮するホイットくんは立ち寄った娼館で無事童貞喪失するんだけど、

 洗ってもらってる最中に思わず発射。

 果たしてこの場面、監督はどのようにして実の息子にディレクションしたのだろうか?すごく気になるところである。

 まあイーストウッド本人も中盤でついうっかり未成年の女の子とセックスしたあげく、最後は彼女の妊娠を暗示して終わるんだけど。