日本の首領 完結編

日本の首領<ドン> 完結篇 [DVD]

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 回を追うごとにキャスティングに東映色が薄くなってゆくような気がする第3作。それを補強する意味でか、前作まで内田朝雄が演じてた大物右翼・児玉大山喜久夫がいきなり片岡千恵蔵御大にチェンジするのも付け焼刃だよなあ。糖尿病持ちで車椅子のヤクザを演じた菅原文太は死の気配を引きずるような不気味さでさすがの迫力でしたが。
 中盤までの最大の見せ場が与党議員役の西村晃のハッスルぶりで、例えば大谷直子がシャワー浴びてる間に栄養ドリンク飲んだり浴室の様子伺ったりして、彼女が出てこようとするとひょいと布団に飛び込んで寝たふりする鮮やかさ!あるいは大あわてで座敷を出る時にテーブルの上に飛び乗って走り抜ける軽やかさ!あのフットワークの軽さは大いに見習いたいものです。あと劇中で何度か熱唱を披露するんですが、歌うのが「海ゆかば」と「月月火水木金金」というのも西村晃本人が海軍予備学生(元特攻隊員)だったことを思えば感慨深いものがあります。ちなみに大谷直子を借金のカタに売り飛ばすのは寺田農…って岡本喜八の「肉弾」のふたりが!という衝撃の展開もあり。
 後半は佐分利信の娘婿・高橋悦史が、その立場ゆえにヤクザにも善良な医師にもなりきれず苦悩したあげくに破滅する姿を熱演しているのですが、この悲劇の図式は三部作に共通する結末なんですけど今回はさすがにやりすぎなんじゃないかという気もしました。でも高橋悦史という役者がギリギリの線でキャラクターの行動に説得力を持たせていて、やっぱりこの人は素晴らしいです。
 ラストカットが三船・佐藤慶渡辺文雄のスリーショットというのも、東映実録路線の終焉を予感させるような寂しい結末でした。
 振り返ると「仁義なき戦い」同様なかなか脇役のキャスティングが定まらない三部作だったのですが、その中で一貫して中島組の幹部を演じた野口貴史(眼鏡かけると生瀬勝久似)に個人的に皆勤賞を差し上げたくなりました。サイパン島のシーンで、片桐竜次が現地人役で英語喋りながら出てきたときはホントどうしようかと思いましたが。