アニマル大戦争


 前作「グリズリー」の大ヒットを受け、予算も襲う動物の数もパワーアップしたウィリアム・ガードラーの監督第8作です。
 権利問題で裁判沙汰になったあおりでオリジナルネガが紛失したとのことで、このDVDにはビスタサイズにトリミングされてるけど画質のいいテレビ放映用マスターと、オリジナルスコープサイズだけど劣化の激しい上映用マスターの両バージョンが収録されています。もちろん今回はスコープサイズ版で視聴。コマ飛び・ノイズ音・退色・フィルム傷たっぷりで、まさにグラインドハウス
 「ビッグ・バッド・ママ」「ブラニガン」のウィリアム・ノートン(妻のエレノアと共同執筆)の手による脚本はさすがにメジャー映画を手がけた人の仕事らしく、前作のような露骨な丸パクリはなし。環境汚染によってオゾン層が破壊され、降り注いだ放射線のために突然変異したウィルスが高地の動物たちを狂わせる、という理由付けは(実際に起こりうるかどうかはともかく)かなり時代を先取りしています。
 一方で、サバイバル・キャンプに参加する登場人物たちがそれぞれに事情を抱えているグランド・ホテル形式や、途中で下山組と残留組が対立するあたりが「ポセイドン・アドベンチャー」風だったりと、パニック映画の定石もきちんと踏んではいるものの、小ぎれいにまとまっている分「グリズリー」のような開き直った豪快さに欠けているのも確か。ガードラー監督の演出力は前作より明らかに向上しているだけにちょっともったいない気もします。
 襲ってくる動物も、猛禽類にクーガー、オオカミ、グリズリー、ガラガラヘビにドブネズミ、そして野犬と多彩ですが、話が進むにつれてどんどん調教の楽な動物になっているような…。
 しかしいかにも70年代らしい全編を覆う乾いた雰囲気や、凶暴化した動物たちが一気に病死してしまう無常な結末、途中で出てくる少女の素性を明らかにしない作劇など捨てがたい部分も多いです。
 出演者は前作に引き続きクリストファー・ジョージにリチャード・ジャッケルが登板。他に「ジョーズ」の最初の被害者を演じたスーザン・バックリーニがふたたび犠牲者役で登場(動物の調教師も兼任)というあざといキャスティングも。
 そして最大の怪演を見せるのが、ガードラー監督の友人でもあったレスリー・ニールセン! 都会の広告会社の重役がウィルスの影響で徐々に凶暴化し、上半身裸で槍を持って「蝿の王」状態に。子どもに暴力振るうは人を殺すはレイプ未遂するわ、あげくの果てに素手で巨大熊に戦いを挑むという「レジェンド・オブ・フォール」ばりの大活躍を見せてくれます。
 結局、この映画は「グリズリー」のようなヒットには恵まれず、プロデューサーとのトラブルもあってインディペンデント映画の世界に見切りをつけたガードラー監督は、続くオカルト・ホラー「マニトウ」で初のハリウッド映画を物にしますが、その公開直後の1978年1月21日、ロケハン先のフィリピンでヘリの墜落事故によりこの世を去ります。享年30歳でした。