ワン・ツー・スリー ラヴ・ハント作戦

 昨夜からどうでもいいことでうつうつと悩んでたりしてたのですが、なんとなく見たこの映画があまりにも面白くて全部吹っ飛びました(吹っ飛んじゃいけないことも含めて)。
 ビリー・ワイルダージェームズ・キャグニーを主演に迎え、コカ・コーラ社全面協力の元に撮り上げたドタバタ喜劇。冷戦下、壁で分断される直前のベルリンを舞台に、東側にコカ・コーラを売り込もうと必死のベルリン支社長キャグニーが、預けられた社長の一人娘とゴリゴリの共産主義者の青年との結婚騒動を解決すべく、文字通りに東奔西走する姿がハチャトリアンの「剣の舞」のメロディに乗せて目まぐるしいテンポで描かれています。
 一度は計略によって青年を東ドイツ警察に逮捕させたものの、その直後に娘の妊娠が発覚。やっとの思いで東側から青年を連れ出し、社長夫妻が娘を迎えに到着するまでの3時間で一人前の婿に仕立てようと金にものを言わせた大作戦を決行するのがクライマックスで、キャグニーが膨大な量の長セリフをひたすら機関銃のようにまくしたて、次から次へとおかしな登場人物が入り乱れる怒涛の展開に圧倒されっぱなしです。
 骨の髄まで共産主義に凝り固まった頑固な青年を「荒野の七人」のホルスト・ブッフホルツが演じ、キャグニーがグレープフルーツを彼の顔に押し付けようとする「民衆の敵」のセルフパロディをはじめ、とにかく無数のギャグが散りばめられているのですが、個人的には新聞記者を追い払う場面で、やるだろうと思った[ナチ戦犯ネタ]が出てきたのがツボでした。
 大団円のあとに待ち受けるオチも素晴らしく、これはアメリカ人にしか作れない映画だよなあと(あとコカ・コーラ社の懐の深さにも)つくづく感心したのでした。
 しかしワイルダーってウィーンで産まれて戦前にベルリンから亡命したユダヤ人で、母親を含む家族をアウシュビッツで殺されているんですね。それを思うとこの映画における戦後ドイツ人の描き方もちょっと別な側面が見えてくるような気もします。まあロシア人も南部人もみんな同じくらいバカなんですけど。