2007年映画ベスト

 残念ながら今年は劇場で見た映画は「ザ・シューター/極大射程」のみ。相変わらず鑑賞はDVD中心体制ですが、ハイビジョンHDDレコーダーの導入により、BSデジタルで特に邦画の旧作を見る機会に恵まれたのが収穫。職場環境が変わって映画を見る時間が以前より増えたけど、本数はそれほど増えませんでした。
 さて、今年特に印象に残った映画は以下の5本。新作旧作混じってます。

1.柔道龍虎房
2.アポカリプト
3.叫
4.公共の敵
5.ドッグ・バイト・ドッグ

 何だか血の気の多い映画が並んだような。
 1はジョニー・トーの旧作(2004年製作)だけど、今年一番心動かされた映画。DVDは去年のうちに出ていたのに、今まで未見だったのは大失敗。主要登場人物が全員柔道家という無茶な設定が、柔道が人と人を結ぶコミュニケーションの手段として描かれる後半になって生きてきて、一見唐突とも思えるクライマックス直前の展開にもきちんと伏線が張られており、その鮮やかな作劇にはただただ唖然とするばかり。
 2は、全編デジタルだった「300」に対抗するかのように、生々しい“実写主義”を前面に押し出したのが好感度高し。DVDのメイキングや音声解説でも「ピラミッドから転がり落ちる首なし死体は、本当にスタントマンが落下して首から上をCGで消去」「婿さん(役名忘れた)にすがりつく死にかけ老人を演じたのは、撮影当時本当に死にかけてた老俳優」「ジャガー・パウが黒豹に追われる場面は、本当に役者と黒豹が追いかけっこ」「腕のない人はもちろん本当に腕のない人」「ラストで海に浮かぶ船ももちろん本物」という、メル・ギブソンの歪んだ情熱が噴き出したエピソードがてんこ盛り。復讐よりも家族を救うために走り続ける主人公に対して、家族を殺されて復讐に燃える男、というメルギブ自身がこれまでさんざん演じてきたキャラクターを敵役に据えていたのも興味深い。
 3は“過去から投射された狂気によって現在に起きる犯罪”“半透明の幕の向こう側”“赤い服の女”“思い出してはいけない記憶”“世界にカタストロフが訪れる”“佇む役所広司”等々、これまでの黒沢清映画のモチーフがまとめて登場する総決算的な作品ながら、まったく新しい表現(特に幽霊!)に挑戦する監督の姿勢に感服。葉月里緒奈も小西真奈美も、かっこいいデクノボーの伊原剛志も(褒めてます)、これ以後見る目が変わりました。
 4は韓国映画のこれまた旧作(2001年)だけど、とにかく不良刑事ソル・ギョングの暴れっぷりが痛快。悪い奴をただ殴るだけじゃなく、ちゃんとその後正座させて懇々と説教するのがなぜかツボに。
 5はまたまた暴力映画の傑作。この監督に「軍鶏」を撮らせようという狙いはいいところを突いている。「柔道龍虎房」とは別人のようなチョン・シウファイの剛直な男っぷりも素敵。

 まだまだ書きたいことは山ほどあるんですが、来年も面白い映画が見れますように!皆様良いお年を!