スコルピオ

時々思い出したように見たくなる一本。冷戦下真っ只中の諜報戦の非情さを冷徹に描いた作品だが、バート・ランカスター扮する老スパイの最大の武器が「旧友たちとの友情」というのが泣かせる。図らずも彼を追う殺し屋アラン・ドロンは、野良猫と恋人にしか心を開かない一匹狼。例のごとくコルト・ガバメントを鮮やかに扱い、手馴れた分解シーンも見せてくれる。
工事現場のチェイスシーンでは、ドロンもランカスターもスタントなしで危険なアクションを披露し、特にランカスターは当時60歳という年齢をまったく感じさせない身の軽さ!
故国の歴史に翻弄されつつも人間味を失わないKGB要員ポール・スコフィールド、CIAの冷酷さをクールに体現するJ・D・キャノンら脇を固める面々も渋く、対する女優陣はゲイル・ハニカットに「象牙色のアイドル」のメアリー・モード!と綺麗どころが揃うが、強面の男優たちに比べるとやや精彩を欠くのが残念。まあマイケル・ウィナー監督はあまり女優を魅力的に描く人ではないが。
「寡黙なプロフェッショナルたちの死闘」というテーマを扱った70年代アクション。これだけで自分の中では随分と評価が甘くなってしまうのだが、やっぱり心動かされるんだよなあ。

ちなみに北米盤DVDのジャケットはランカスターの単独主演扱い。悲しい。